地域プランナー育成ワークショップ RADLOCALで語られた「地域×メディア」の未来②

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ホテルよりも安く利用できることに加え、旅行先の現地に住む人の家で過ごすことができる魅力的なサーヴィスAirbnb。33,000以上の都市、192カ国で利用されており、自分の家や空き部屋を宿泊施設として提供でき、旅人はまるで暮らすように旅ができる魅力があります。

しかし、なぜAirbnbがここまで流行ったのでしょうか?実はソーシャルメディアやウェブなどのテクノロジーの発展以外に、もう一つ大きな理由があります。今回の記事では、前回の記事でご紹介した地域プランナー育成ワークショップRADLOCALで学んだことを踏まえつつ、述べていきます。

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日常生活の中にある利益相反がイノヴェーションの種になる

まず、その理由をお話しする前に、私たちの日常生活の中にある障害(バリア)に目を向けてみましょう。

障害(バリア)のわかりやすい例を上げると、「身体が不自由な方とそうでない方」、「女性と男性」、「若者と高齢者」など物理的なバリアがあります。さらに、「合併したA町の住民とB町の住民」、「道路を自動車として使う人と使わない人」の間にも心理的な障害(バリア)が存在します。つまり、障害(バリア)とは必ずしも目に見えるものではなく、なんとなくその間に境界線のようなものがある状態だといえます。

このように、ある集団とある集団の間に障害(バリア)がある状態を「利益相反」と呼びます。そして、ポイントはその利益相反する集団が関わる場の既成概念を「組織」や「建築」、「メディア」が変えることができるか。それによって、イノヴェーションを起こすことができるかどうかが決まります。

では話をAirbnbに話を戻しましょう。この例でいうと、Airbnbが関わっていた利益相反がある集団は、「家を持つ人の集団」「旅をする人の集団」です。

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地域にあるモノやコトの概念が変わるとき、地域にイノヴェーションが生まれる

「テクノロジーを新しくすることではイノヴェーションは生まれない。地域にあるモノやコト、場の概念が変わるとき、イノヴェーションが生まれる」とWIRED編集長の若林さんはワークショップの懇親会でおっしゃいました。

そして、前述したようにAirbnbが関わっていた利益相反がある集団は、「家を持つ人の集団」と「旅をする人の集団」です。そしてその集団の利益相反を解決するのがAirbnbというメディアであり、そのメディアは世界中の地域にある家の概念を変えることで関わる集団の行動を変えました

まず、あなたは家という場所をどう捉えているでしょうか?おそらく、私たちの多くは家という場を「家の主人やその家族が住むための場」と捉えているでしょう。もちろんときどき友人を泊めてあげますが、大概宿泊費を請求することはありません。言い換えると、「家を持つ人の集団」と「旅をする人の集団」は、「家は旅行客を泊める場所ではない(泊まる場所でもない)」という既成概念を持っており、お互いに障害(バリア)がある状態だと言えます。

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しかし、AirBnBはその概念を大きく変えました。家という場の概念を「家の主人やその家族が衣食住をする場」だけでなく、「世界中の観光客が泊まれる宿」でもあるという概念に変えたのです。それによって、「家を持つ人の集団」は自分の家を宿として提供することが可能になり、一方「旅をする人の集団」も旅行先の家を宿として利用するようになりました。まさに2つの集団の行動を変えたのです。

もちろんWebやソーシャルなどのテクノロジーの発展、レビュ機能などの充実がAirBnBの普及を後押ししたことは間違いありません。また、海外旅行者にも、「現地の人たちと交流してみたい」というニーズがあったからこそこのサービスが成り立ったと考えられます。

しかし、それよりも地域にある普通の家が「世界中から訪れる観光客が泊まれる宿」という概念に変わったことの方がよりイノヴェーションを起こす上で重要だと考えれます。なぜなら、私たちの日常生活は既成概念で構成されているからです。

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映画館の概念を変えたママシネマという取り組み

もう一つ、地域にある身近な事例を交えましょう。映画館の概念を変えた「ママシネマ」という取り組み。こちらは、子どもがいる母親が安心して映画を見れる映画館での試みです。

私たち日本人は映画館は「静かに鑑賞する場」であるという場の概念を持っています。だから鑑賞中に子どもが泣き出したりするとその場の概念からはみ出すアブノーマルな行為だとみなし、イラっとしてしまいます。しかしママシネマの取り組みは、「静かに鑑賞する場」という映画館の概念から「少しくらい子どもが泣いても安心して観られるお互い様な場」という新しい場の概念を作り出しました。

それによって、子どもがいる母親が子どもが泣いても安心して映画を鑑賞できるようになりました。もちろん映画は誰だって静かに観たいものです。けれどもそこに関わる人や集団には様々な立場があり、障壁(バリア)があるものです。そういったバリアを少しずつ解消してあげることで、その地域社会が既成概念で凝り固まった場ではなく、新しく寛容な場になっていくのではないでしょうか?

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このような事例から分かるように、地域にはヒントとなる財が転がっています。何気なくある地域にある場に目を向けてみましょう。

映画館、図書館、美術館、コインランドリー、公民館、学校、公園、道路、まちにあるすべての場の既成概念を変えるだけで、誰でもその地域をイノヴェーティブにすることができるのです。もちろんその概念が変わるのは数十年という単位が必要だと考えられています。しかし、その地域の場の概念を変え続けることがまちにイノヴェーションを生み出し、まちの寛容な文化を作っていくことになるのではないでしょうか。

イノヴェーションは、日常の中にあります。日頃からぜひあなたのまちにある何気ないモノやコト、場に目を向け、どのような既成概念があるのか、そしてそれをどう変えれば関わる人の集団が動くのか、本記事がその参考になれば幸いです。

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最後に、地域プランナー育成ワークショップRADLOCALでご登壇いただきました講師陣の方々、そして運営をされたYCAMのスタッフの皆様に感謝するとともに、さらに地域×メディアの未来を面白くすることができればと思います。

 

Facebook : 大崎龍史(おおさきりゅうし) 

Twitter : RyushiOsaki

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