フジロックヒストリー : 音楽がつくる新しい時代のコミュニティデザイン【前編】

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夏フェスのシーズン。その中でも、一際注目度の高い「FUJI ROCK Festival」。1997年から開催されたこの音楽フェスは、1999年より新潟県湯沢町の苗場スキー場で開催されるようになりました。

そして、苗場での開催をスタートしてから18年もの歳月が経ち、毎年多くの人が参加するようになりました。しかし、なぜ新潟県湯沢市という東京から遠い地域に、音楽フェスが根付き、そして日本人だけでなく世界からも人が訪れるようになったのでしょうか。実は、フジロック成功の裏にはあまり知られていないヒストリーがありました。
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1. 30億円の経済効果と地域に吹く新しい風

毎年10万人以上が訪れるフジロック。今年も10万人以上が来場し、毎年30億円以上の経済効果を生んでいます。フジロック開催時には、周辺の宿泊施設や飲食店、各種の小売店などに人で賑わいが生まれます。

けれども、疑問に思わないでしょうか。フジロックの開催期間は4日間。打ち上げ花火のような一過性のものではないかと思ってしまうかもしれません。

しかし、何もフジロックが生み出しているのはフジロックに訪れた観客による経済効果だけではありません。実は1ヶ月以上前からフェス関係者は現地入りします。

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そして、ステージ設営や事前準備を行い、フェス当日に向けて、地域の宿泊施設に泊まり、設営の休憩にはまちに出て、まちのお店で食事をしています。つまり、短期ではなく、中期的な地域での消費が生まれているのです。

そして、それは単なる消費ではありません。フジロック運営会社であるスマッシュを始めとした関係者が苗場を地元とする人たちと交流をすることで、新しい風がその地域に吹くようになりました。

2.地域に溶け込むコミュニティデザイン

新潟県の越後湯沢という、日本の過疎地に吹いた「新しい風」。

けれども、その風が吹くのには時間がかかったと苗場観光協会の方はおっしゃいます。フジロックの苗場開催の話が挙がった当時、住民の反対があったといいます。

「ロックフェスなんて怖い!」
「ドラッグやレイプなのがあるんじゃないだろうか?」

そこで、フジロック運営会社のスマッシュのスタッフは、地域に溶け込むために、地域の人たちと飲み食いしたり、ゴルフをしたりすることで、地域との関係性を築いていきました。そういった人間関係が基盤として出来上がったからこそ、観光協会の協力もあり、町内会や自治会にて地道にフジロックの協力をお願いし、開催にいたったそうです。

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苗場観光協会の受付には、その関係性を現すように、フジロック運営会社スマッシュの日高社長を地元の人たちで囲む和やかな写真が飾られていました。日高社長をはじめ、フェススタッフが苗場という場所を大切にしたからこそ、苗場でのロックフェスは実現したのです。

そしてフジロックが苗場で開催されるようになってからも、毎年前夜祭には苗場の住民をお招きした「苗場音頭」という踊りを開催しています。フジロックは観客やアーティストだけではなく、地域の人たちのためのものでもあるという地域への「おもてなし」があるのです。

小さな風を起こしながら、地域にフジロックという大きな風を巻き起こす。

スマッシュの日高社長をはじめ、スタッフの方々の表沙汰にはされない努力があります。それが、10万人が動くコミュニティデザインの萌芽となったのです。

3.苗場に関わる新しい住民の形「フジロッカーズ」

そして、何も苗場に関わっているのはフェス関係者だけではありません。フジロックは、他のフェスに比べてフェス自体のファンが多いと言われており、そんなフジロック好きな人たち「フジロッカーズ」も地域との繋がりを作っています。
フジロックにはステージ会場をつなぐ橋「ボードウォーク」があります。フェス当日、何気なくステージを移動する際に歩いていたボードウォークには、実は住民や観光協会の人たち、そしてフジロックが大好きな人たち「フジロッカーズ」が作り上げているのです。
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2002年から、車椅子の人にも大自然を楽しんでもらえるようにと、森林の中を散策できる道づくりがスタート。数多くの人たちが道づくりに参加しました。

そして、完成後も年に3回、そのボートウォークやステージへの道周辺を綺麗にする「ボードウォークキャンプ」が開催されています。フジロックでの思い出が楽しすぎたフジロッカーズの人たちがわざわざ東京や他地域から会場の橋やステージ周辺を綺麗にしに苗場に訪れるのです。

フジロッカーズと苗場をつなぐ架け橋。フジロックが、その地域に新しい関わり方をする住民をつくるきっかけをつくったのです。

フジロックヒストリー。後編では、いよいよフジロックがつくる新しい時代のコミュニティの形の核心に迫ります。

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