フジロックヒストリー : 音楽がつくる新しい時代のコミュニティデザイン【後編】

Screenshot_11

夏フェス、「フジロック」。
前編記事では、フジロックが生み出す中長期的な関係づくりに触れさせていただきました。いよいよ後編ではフジロック自体の魅力を紐解いていきます。

1. 日本的フェスティバルの心地よさ

そもそもロックフェスの起源は、いつ、どこなのでしょうか?
ロックフェスの萌芽が生まれたのは1960年代末のアメリカ。ロック以外の音楽ジャンルでのフェスティバルは以前から開催され、それに倣ってロックフェスも行われるようになりました。しかし他の音楽ジャンルと圧倒的に違うのは、時代への対抗文化の象徴としての「ロックフェス」という位置付けがされていた点です。

当時のアメリカは、ベトナム戦争や女性権利問題などで議論が湧き上がっていました。そして、その悪しき時勢の流れに対抗する文化として「ラブ&ピース」という考え方が生まれ、世界を変えようというムーブメントが起こったのです。その象徴的な音楽がロックであり、それを表現する場所が「ロックフェス」の始まりです。

Screenshot_12
一方、日本を代表するロックフェス「フジロック」は、日本らしい独自の文化として発展します。海外から輸入された「ロックフェス」は、日本人らしい「お祭り」という洗練され秩序が保たれた雰囲気を合わせもって発展しました。そして、その雰囲気を作り出しているのは、フジロックならではの「マナー」と「世界観」です。

まず、フジロックならではのマナーとはなんでしょうか?それは、フジロックのビジョンである「世界一クリーンなフェス」を体現する観客たちの主体性がつくりだすものです。

どうしても「環境を大切にしよう!」とか「エコな生活を!」というと説教臭くなってしまいます。けれども、フジロックは環境を大切にしようと声高らかに叫ぶようなことはしません。フジロックでは、観客たちの行動をデザインするように工夫がされています。

例えば、フジロックではゴミの分別が明確です。普段の生活の中では、「だれも見ていないし、まあいっか」と燃えるゴミも燃えないゴミも混ぜて捨ててしまっているかもしれません。しかし、フジロックのゴミ捨て場には必ずスタッフが常駐していてゴミの分別のお手伝いをしてくれます。だからこそ、「やっぱりちゃんとした方がいいよな」と感じ、ゴミの分別に気を使うようにデザインされています。

フジロックはただのイベントではなく、開かれた公共空間であり、私たちにそっと社会との関わり方、自然との関わり方の大切さを伝えてくれます。さらに、大自然という場所であるからこそ感覚的に訴えてくれるのです。

 

次にフジロックの「世界観」のお話です。フジロックの会場は、世界観を統一するために大自然を生かす形で空間デザインがされていると言われています。

しかし、空間デザインは世界観を作り出すひとつの側面にしかすぎません。私は世界観を作り出しているのは、観客自身だと思います。とくに、観客のファッションはお祭りと同様、夏フェスの世界観を作り出す大きな要素になっています。

例えば、毎年フジロック前に「フジロックファッションまとめ」のような記事がネット上にアップされ、参加する人たちは思い思いにフジロックにあった格好をしようとオシャレをしようとします。お祭りに参加するとき、「今年の夏祭りはどんな格好をしようかな?」、「これってお祭りにあう服装かな?」と考えるように、フジロックの世界観にあった服装をしようとする観客たちによって世界観が作られ、拡張されていくのです。

 

フジロックの会場苗場に向かう道中、駅のホームや新幹線の中で、「あ、あの人もフジロックに行く人だ!」とどこか共感した覚えはないでしょうか?笑 まさに大自然の中で開催されるロックフェスにふさわしい格好は何かと観客自身が考え、すこしずつ作られていった世界観なのではないでしょうか?

2. 誰もが参加しやすい音楽業界発のコミュニティデザイン

20代の若者だけが参加していると思われがちな、ロックフェス。けれども、フジロックは老若男女が参加し、その空間には多様性が生まれています。5歳以下の子どももいれば、50代の人もいる。でも、なぜそこまで幅広い年齢層の人たちが参加できるフェスになったのでしょうか?

約20年という歳月を経たフジロックと同じように、観客も年を重ね、生活環境が変化します。例えば、20代のときにロッカーだった若者が結婚し、子どもが生まれると、生活環境が変わりフジロックに参加しづらくなります。けれども、フジロックには子どもを連れてきても遊べるキッズランドという空間や会場内の森林や川で、アウトドアを満喫できるような工夫がされています。なんと、フェス期間中にほとんどの時間を音楽ステージではなく、そういった場所で過ごす親子もいるほどです。

kids1

そして、キッズランド以外にも、各ステージに救護テントが設置されていて、子供の授乳・オムツ替えをすることができるパパママに嬉しい配慮がされています。フジロックには、安心して子どもと満喫できるコミュニティデザインがされています。

さらに、食の側面からも私たちへの配慮があります。オアシスというフードエリアには、焼き鳥やカレー、ピザ、ラーメンなどがっつきたくなる屋台が立ち並んでいます。その中に、苗場食堂という苗場観光協会の人たちが中心に運営する屋台があります。

0723_naesyoku013

その屋台には、地元の食材を中心にお味噌やお醤油を使ったシンプルな郷土料理が販売されています。始まりの背景をうかがうと、「若い子はお肉とかが好きやろうけど、フジロックは数日間野外やからそれやと疲れが取れんと思うんです。だから、若い子達にはお腹にも体にも優しい日本食の献立を考えて作っています。それに、うちらはオリーブオイルなんてそんなオシャレなものどう使ったらええかもわからんのです笑。」と苗場観光協会の職員の方は照れながらもそんな思いやりを語ってくれました。

news_header_green_a

フジロックがアーティストではなくフジロック自体のファンが多い所以は、こういったどんな年代の人、どんな人でも参加しやすい配慮がされているからです。だいそれたことをいうつもりはありませんが、まさにフジロックそのものはたんなる夏フェスではなく、誰もが参加しやすい音楽業界発のコミュニティデザイン、国づくりの一部を担っているのではないかという感覚さえ私の中で芽生えました。

東京や大阪などの首都にはない、余白がある地域の大自然。そして、世界中から愛されている厳選されたアーティストによる音楽。それらを媒介にして、新しい時代のコミュニティデザインは始まっているのです。

来年20周年を迎えるFUJI ROCK。来年、またフジロックに参加出来ることを楽しみに、これからも地域と音楽が繋がり、新しい時代を作っていくことを願ってやみません。

Introduction:大崎リューシ
Facebook:Ryushi Rocky Osaki
Twitter:RyushiOsaki

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on LinkedIn
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です