チームラボとRhizomatiksの違い:メディアアートは、人と都市の関係をどうハックするか?【前編】

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広告業界の中でも独自の立ち位置をとり、ユニークな視点を持つメディアアートのスペシャリスト集団であるチームラボとRhizomatiks(以下:ライゾマ)。彼らは、テクノロジーとアートの垣根を越えて、今までに誰もやったことがない取り組みを続けています。

そんな両社に言えるのが、とくに際立った個人の存在。チームラボは代表の猪子寿之さん、ライゾマは真鍋大度さんというように、どちらも個が立っているスペシャリスト集団という印象が強いです。しかし、チームラボとライゾマの違いを明確に理解している方は少ないのではないでしょうか?

また、彼らが都市や地域を舞台にしたプロジェクトを行うことも珍しくはありません。彼らの存在によって、人と都市や地域の関係はどのようにハックされるのでしょうか?その二つを紐解いてみたいと思います。

 

メディアアートって何?

でも、そもそもメディアアートって何?という方もいらっしゃるかと思います。さまざな定義があると思いますが、ここでは最先端のテクノロジーを使った芸術と定義してみます。分かりやすい例をあげると、東京駅で行われたプロジェクションマッピングやPerfumeのライブでの映像演出は、メディアアートに分類されます。

しかし、両者とも根本的にテクノロジーに対するアプローチが異なります。

チームラボは「テクノロジー×日本美術」ライゾマは「テクノロジー×ヒューマニティ(人間性)」という大きなアプローチの違いが、実はあります。本記事では、まずチームラボに迫ります。

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チームラボ:テクノロジー×日本美術

チームラボは、プログラマ、ロボットエンジニア、数学者、建築家、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、CGアニメーター、編集者、美術絵師など、さまざまなものづくりのスペシャリストから構成されているテクノロジー集団です。有名な作品だと絵に書いた魚がまるで生きているかのように巨大スクリーンに映し出される「お絵描き水族館」があります。テレビや雑誌などで見た方も多いのではないでしょうか?

そんなチームラボの根底にあるのは、「テクノロジー×日本美術」。つまり、テクノロジーを使って日本美術を読み解くということです。

では、チームラボはどう日本美術を読み解いているのでしょうか?そこには、代表の猪子さんがいう日本人独特の「超主観空間認識」が関係しています。ここからは、猪子さんの書籍「チームラボって、何者?」を参考に話を進めていきます。

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<西洋的空間認識の違いと日本的空間認識の違い>

私たちは、モノを見るときに西洋的空間認識、つまり遠近法でモノを見ていると言われています。例えば、誰もが知っている「モナリザ」は西洋的空間認識(遠近法)で描かれている代表作品です。

しかし、私たちはモナリザの絵のようにすべてが見えるわけではありません。実際は、脳の高度な処理技術により、背景を合成されることで、モナリザと背景が構成されて見えているように思っているだけなのです。

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これは私の解釈なのですが、日本の学校教育では、遠近法という素晴らしい文化が日本に取り入れられたために日本の美術が発展した、という文脈で日本美術が紹介されてきたように思います。確かに遠近法が取り入れられたことで日本美術は発展しましたが、日本的空間認識が影響して発展した海外の美術史も忘れてはいけません。

もしかすると猪子さんは、そこに対して疑問を持ったのかもしれません。スーパーマリオ、マンガ、そして日本美術に興味を持ち、調べるうちに遠近法とは異なる日本的空間認識「超主観空間認識」にたどり着いたといいます。

その超主観空間の特徴は、絵を鑑賞しながら、絵の中の人物にもなりきれ、絵の中と外を自由自在に行き来できることです。では、下の絵を見てみましょう。

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さきほどのモナリザの絵は、作者のレオナルド・ダ・ヴィンチの視点でしか絵を鑑賞することができません。つまり、視点が固定されています。

しかし、日本美術の視点は固定されていません。上の日本画でいうと、俯瞰して鑑賞することもでき、かつ絵の一番右下にいる人物になりきってその絵を鑑賞することもできるため、その絵を自由な視点で鑑賞できます。

日本美術の絵巻やふすま絵は、こうした空間認識をもとに描かれています。例えば、絵巻は右にスクロールしながら新しい場面を見ることが可能です。言い換えると、日本人は、横に空間的に繋がりがあると理解して、横長の絵を好きな部分で切り取ってみているのです。同様に、ふすま絵も、横に動くことが前提のキャンバス上に描かれています。一方の西洋画では、絵を切り取るという発想はなく、絵の中心に人物を固定しているのが主流です。

もしかすると、江戸以前の私たち日本人祖先は、そういう空間認識の中で生活していたのかもしれません。そして、その超主観空間は現代においても受け継がれています。それが、「スーパーマリオ」や「ドラゴンクエスト」の空間です。

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ドラゴンクエストは、古来の日本美術と同じ超主観空間で構成されています。主人公を俯瞰して見ているだけではなく、その中の人物になって主観的にその空間にのめり込むことができます。また、スーパーマリオは巻絵やふすま絵と同じように横にスクロールすることを前提にゲームが構成されています。一方、西洋のゲームは、主観です。これもそれぞれの国の空間認識の違いが生み出したものなのではないでしょうか?

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チームラボが手がけるメディアアートは、この日本美術的思想が背景にあります。 余談ですが、私はチームラボが好きすぎて現在開催中の「踊る!アート展と、学ぶ未来の遊園地」に2回も行ってしまいました(笑) チームラボが手がける伊藤若冲の鳥獣花木屏風は鳥肌ものです。ぜひ、5月10日までですのでこの機会に訪れてみてはいかがでしょうか?きっとあなたの中で、日本美術の新しい解釈が生まれると思います。

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次回のブログ記事では、一方のライゾマに迫りたいと思います。乞うご期待ください!

Facebook:Ryushi Rocky Osaki (大崎龍史)

Twitter:RyushiOsaki

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