ふるさと納税ブームを、ただの県産品消耗戦で終わせないために~問われる自治体と生活者との関係~

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昨年あたりから注目され始めた ふるさと納税。去年10月にソフトバンクがふるさと納税ポータルサイト「さとふる」を立ち上げたり、今月ヤフーがふるさと納税に対してのポイントサービスを始めると発表。自治体の安定した収益源になるような民間のサポートが少しずつ増えてきました。

しかし一方で、このふるさと納税をきっかけに、ある自治体では県産品の特典をいかに豪華にするかに注力し、目的を見失っている現状があるといいます。今回のブログでは、その現状を読み解き、今後の自治体と生活者の関係について綴ってみようと思います。

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そもそも、ふるさと納税とは?

ふるさと納税は、自治体への寄附金のことです。ふるさと納税の特徴として、生まれ故郷でなくても寄付ができ、複数の自治体から選択することも可能です。そして使い道の指定もでき、寄付をすると住民税などが控除されます。

そういった特徴がある中、寄付のお礼として特産品がもらえることが、ふるさと納税の盛り上がりの一つの理由になっています。そこで、自治体は「こんな特典をつけてあげればうちの地域に興味を持ってもらえるんじゃないか?」、「うちの地域への移住を考えてくれるんじゃないだろうか」と考え、他の自治体と競うように特産品合戦を始めました。

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ただ、特産品の差別化をするのは悪い側面だけではありません。目的が認知度の向上であれば、企画力次第でその地域の認知度をあげることができます。例えば、最近であれば宮崎県都城市はふるさと納税をしてくれた人に対して、焼酎の一升瓶を1年分365本プレゼントする企画を実施。Twitterユーザーを中心にネットで話題化しています。

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Twitterでは「都城市に100万円ふるさと納税すると貰える一年分の芋焼酎がこわい」と言及したツイートが約4000回リツイートされるなど共感を呼びました。(ネトラボ:焼酎を1日1升!? 都城市「ふるさと納税」に焼酎1升瓶×1年分365本もらえるプランがあってTwitterに衝撃走る) ほかにも「毎日焼酎一升も飲めない…w」、「無理無理!怖いわ九州」などのコメントが見受けられます。

1年分プレゼント系の企画はキャッチーで話題化しやすいです。ただ、もっと重要なのは焼酎の消費量全国1位を過去に何度も記録している宮崎県の県民性を理解し、そんな焼酎好きな県民性に対し思わずツッコミを入れたくなったり、九州県民の酒豪の恐ろしさを感じる企画になっていることです。そういった企画性もあり、都城市のふるさと納税の36種類のうち19種類が品切れとなっているなど人気を呼んでいます。

都城市のように、話題化をすることで都城市の知名度を上げることも「ふるさと納税」ができることです。しかし、それ以外にもふるさと納税をきっかけに、地域との関係性を作ってもらうことが自治体はできるのではないでしょうか?

 

都市エンゲージメント〜地域との接点としてのふるさと納税〜

ではその地域との関係性はどのように作っていくのでしょうか?一つの答えが、広告業界にあるように感じます。広告業界を中心に、エンゲージメントという言葉が広がりました。エンゲージメントはとは、生活者との関係度合いを表す言葉です。

ソーシャルやデジタルな時代において、誰もがいいね!やリツイートをすることで、ブランドや地域と関わり合うことができるようになりました。そして、そんな関わり合いができるようになった時代において、ヨーロッパなどではモバイルメディアを活用した都市計画にも使われる言葉になっています。

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ここでは、都市エンゲージメントを「街への生活者の関わり度合い」とします。例えば、もともとその街出身で地域のイベントに積極的に参加する生活者は都市エンゲージメントが高い人でしょう。何かしらの誇りや愛着をそのまちに対して持っている状態といえます。

しかし、大半の世の中の人は住んでいる地域に興味はありません。「ここの地域が最高!」と言われても一般的な生活者は「だから何?」なのです(笑) だからこそ、生活者が普段から何に興味があるのかを知る必要があります。さらに歴史やデザイン、ファッション、食、音楽、映画など生活者が興味のある切り口からその地域を知ってもらい、好きになってもらうことが重要です。そのためには、いかにいろんな切り口からその地域を知ってもらうことができるか考える必要があります。(これは最近自分にも言い聞かせているのですが、地域しか知らない「地域バカ」になることほど危険なことはないのです。)

話を戻すと、ふるさと納税は「食」としての切り口が強いので生活者が興味のあることです。そのため、「寄付をすれば◯◯県の県産品がもらえる」と多くの生活者の心を動かし、ふるさとへの寄付市場は拡大を続けています。しかし、ただ寄付をしてもらう施策なのか、それとも街への関わり度合いを高めてもらう施策なのかで全然違ってきます。下の図を見てみましょう。

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例えば、自治体の目的が「移住者の増加」だとしましょう。そのために考えられる施策はいろいろとあります。そして考えついた施策を段階的に並べる必要があります。これを移住者増加のための都市エンゲージメントの階段とします。

ここで言えるのは、移住に興味のない生活者がFacebookで移住に関する投稿を見て、いきなり移住説明会に訪れたりはしません。すこしずつ地域に興味を持ってもらい関わり合いの回数を増やし、その関わり度合いを深くしていくことで将来的に移住を検討してもらうことができるのではないでしょうか?そう考えると、ふるさと納税は寄付を増やすことだけが目的の施策になるだけでなく、例えば移住説明会の一歩手前、その地域に関わってもらう施策として機能します。

 

地域への熱量をマネージメントできるか?

この都市エンゲージメントの階段に言えることなのですが、自治体はいかにして「地域へ訪れてくれた観光客」や「上京した元地元民」の熱量をキープさせ、なおかつ地域への熱量を継続的に高めてもらえるかが重要だと思います。

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個人的な体験談として、私は愛着のある香川県から就職のため上京。それから1年が経過しようとしていますが、日に日に香川県に関する情報に接する機会は減り、正直香川県への熱量が下がってしまいました。あれだけ好きなことでも接する機会が減ると、愛着や誇りも薄れていってしまうのです。そしてそれに逆らうことは絶対にできないのです。これは体験をもって断言します。

その背景には、情報過多、メディアの多様化があります。そして、もっとも決定的なのは「地域=ダサい」という文脈が東京では流れていることです。その文脈のせいで、地域について語りづらい空気感が作られてしまっていることです。

もし、ある自治体が首都圏への観光プロモーションや移住プロモーションをしたいと考えているなら、そんな文脈が流れてしまっている中で戦わないといけないのです。これも否定できない事実です。その文脈にいかに逆らうか、もしくはその文脈を生かした施策を打ち出せるか。これも自治体がぶつかる壁だと思います。

だからこそ、地域にすでに熱量を持って関わってくれている観光客や元地元民を大切にし、彼らの熱量を継続させるためのコンテンツを作り続ける必要があります。そのコンテンツの一つとして、ふるさと納税を活用することもできます。一方、熱量がない人たちや一度上がっていたのに下がってしまった人たちの熱量を再度上げるのは相当の苦労とオカネが必要です。そのためのオカネと、すでに地域に関わってくれる生活者の熱量を継続させるためのオカネ。どちらが費用対効果のいい施策といいといえるのでしょうか?今後の自治体のふるさと納税を含めた施策に注目です。

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