【国内事例】九州の新たな取り組み~佐賀県情報配信プロジェクト「FACTORY SAGA」~

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未来を感じさせる図書館やデジタルメディアを活用した教育を促進している佐賀県武雄市。クラウドファウンディングを活用した市民プロジェクトの促進や「Office de YASAI」などのウェブサービスを活用し県産品の販路を展開している宮崎県日南市。住みやすさを生かしスタートアップ誘致クリエイター誘致に積極的な福岡。そんな新しい取り組みをどんどん展開している九州。今日は、その中でも「コラボレーション」という手法を用いた佐賀県庁の情報配信プロジェクト「FACTORY SAGA」の取り組みをご紹介します。

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佐賀県が持つ課題

佐賀県には、有田焼や佐賀牛などの全国に誇れる名産がたくさんあります。しかし残念なことに、多くの人は佐賀県にぱっとしない印象をお持ちではないでしょうか。それぞれの名産品は胸を張って誇れるレベルのものなのに、佐賀県自体の存在感は非常に薄い。この状況では、佐賀県の様々な情報を配信してもなかなか気づいてもらえない。そこでコラボレーションという手法を用いて情報配信プロジェクトを始めたと佐賀県FACTORY SAGAプロジェクトリーダーの金子 暖 氏はいいます。(宣伝会議インターネットフォーラム2014のセミナーにて)

図1(左)佐賀県FACTORY SAGAプロジェクトリーダー 金子 暖  (右) 宝島社 桜田圭子

FACTORY SAGA~コラボレーションという手法~

そもそも最近の地域プロモーションの傾向として、「香川県はうどん」、「大分県は温泉」、「広島県はおしい」などのタグラインを作りそのタグラインに乗せて県の名産物や観光名所を売り出す手法、また、熊本県のように「ゆるキャラ」という手法を用い、地域の認知度を上げたり好意度の向上をはかったりする手法が主流となっています。そんな中、佐賀県は企業とのコラボレーションという手法による新しい情報発信のスタイルを見出しました。まず佐賀県がターゲットとしたのは、「世の中の情報に敏感でこだわりを持つ30代を中心とした女性」です。そして普通なら、その女性に対して直接アプローチする手法を考えると思います。しかし、佐賀県は直接ターゲットにアプローチするのではなく、すでにターゲットセグメントを持っている企業へのアプローチを図ることで効果的に接点を作りました。そして、佐賀県が持つ技術力や県産品などの「いいもの」と、30代を中心とした女性のターゲットとする生活者が愛着を持つブランドや企業、イベント、メディアなどとコラボレーションさせることで、ターゲットの日常生活の中で佐賀県との接点を増やし、佐賀県の地域イメージが伝わるよう取り組みを開始しました。

コラボ事例~企業×自治体~

1. 出版社 宝島社 (出版社×自治体)
2. グラノーラ専門店 GANORI (グラノーラ×自治体)
3. ゲーム会社 スクエアエニックス (ゲーム会社×自治体)

まず、1つ目の出版社である宝島社と佐賀県とのコラボでは、かわいいものラボという30代女性を中心としたラボを立ち上げ、「Steady」や「InRed」、「リンネル」などの雑誌で佐賀県の特集を組んでもらうだけではなく、リデザインされた日本酒や有田焼が付録でついてくるなどの企画も行いました。もちろん、それだけでなく、女子向け足湯イベント「佐賀県美人の湯」を開催し、日本テレビ、WBS、新聞などで取り上げられることで、話題化を図りました。

図2

2つ目は、グラノーラ専門店のGANORIとのコラボレーションです。このコラボでは、ただ県産品を使ってグラノーラを作るのだけではなく、グラノーラ教室など実際にグラノーラ作りを体験できるような場所を設け、そこに来て頂いた人に佐賀県の良さを伝えるような取り組みも行いました。

図3

 

そして、3つ目はゲーム会社スクエアエニックス(以下:スクエニ)とのコラボレーション。このコラボはスクエニが出しているゲームシリーズ「サガ」が今年で25周年を迎え、それを記念して「さが」同士で何かできないかといういわゆるダジャレから「ロマンシング佐賀」というゲーム企画が立ち上がりました(笑)え、でもゲームってどっちかっていうと男性がターゲットじゃないの?そう思う方も多いと思います。しかし実は、企画段階から佐賀県産の花や器、家具、食材などの男性よりも女性の方が関心のあるものをコンテンツにしており、女性にも興味を持ってもらえるようなゲーム作りを行っています。その結果、オンラインだけではなくオフラインで開催したイベント「ロマンシング佐賀」にはたくさんの女性来場客も訪れ、最終的には4日間で約7000人の方が来場しました。

 

Screenshot_4「ロマンシング佐賀」イベント風景

企業×自治体が生み出す価値

「新しい佐賀県をみなさんと作っていきたい」

『Factory SAGA』プロジェクトからはそういう思いが伝わってきます。

自治体だけで出来ることは限られています。「首都圏への情報配信がしたい」、「元県民へアプローチしたい」と、予算が少ない中で試行錯誤されている自治体広報に関わる方はおっしゃいます。もちろん、自分たちでできる自治体はいいですが、予算が少ない自治体が出来ることは限られています。だからこそ、自分たちだけで盛り上げようとするのではなく、地元企業や東京の企業とコラボをしていくことで、その地域を盛り上げていくことが出来るのではないでしょうか。ただ、このような取り組みの場合、win-winの関係性ではなく自治体に多くのメリットがある企画になってしまいかねません。だからこそ、企業へのメリットを明確化し、かつ自治体が地域に対する想いやビジョンなどを企業に明確に伝えることが大切になってきます。実際、FACTORY SAGAのウェブサイトでは知事のインタビュー動画が掲載されていたり、「ロマンシング佐賀」のゲームの中にも市長の熱い想いが伝わるようなコンテンツ作りをおこなったりしています。その地域をどう伝え、どう盛り上げたいのか。そして単発で終わってしまうのではなく、腰を据えて話題が絶えない取り組みをする。素敵な佐賀県の取り組みに今後も注目です。

ご読了頂きありがとうございました。

オオサキリューシ(大崎龍史)
Facebook : Ryushi Rocky Osaki
Twitter : RyushiOsaki

 

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