ゆるキャラをブームで終わらせないために~100年後も続くムーブメントへの挑戦~

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「ゆるキャラはもういいんじゃない?」そんな声が聞こえてきそうな昨今。そんな中、まちづくりや地域づくりの最前線に立つ、ゆるキャラ担当者の方々を招いたセミナー「徹底検証!?「ゆるキャラ」の活用価値を問い直す」が開催されました。以下、担当者の方々のお話をまとめています。

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[パネラー]
熊本県商工観光労働部くまもとブランド推進課長 成尾 雅貴 氏
浜松市企画調整部広聴広報課シティプロモーション担当課長 石岡 琢磨 氏
佐野市佐野ブランド広報活動推進委員会委員長 為国 孝敏 氏

 

【県民の総幸福量の最大化を目指す、くまモン】

熊本県政の目標は、県民の幸福の最大化。そのために、九州新幹線前線開業をきっかけに熊本県民が自らの周辺にある驚くべき価値のあるものを発見し、それをより多くの人に広めていこうという「くまもとサプライズ」が考案されました。そのときに誕生したのがくまモンです。そしてなんと今年の3月において、Twitterではフォロワー33.6万人Facebookでは「いいね!」が15.8万人とソーシャル上でも人気者となり、平成23年11月から平成25年10月にくまモンが熊本県にもらたした経済波及効果は1,244億円(くまモン利用商品の売り上げおよび観光客増加による経済波及効果)、パブリシティ効果も90億円と発表されています。(日本銀行熊本支店発表)

では、くまモンはなぜそこまで人気になったのでしょうか?
実は、くまモンは地元にいて活動するゆるキャラではなく、自ら熊本を売り出すゆるキャラという立場を取ることで他のゆるキャラとの差別化を図り、九州新幹線の終着点である大阪(関西圏)にまずは自分自身を売り出す活動を始めました。そこでSNSや大阪人向け名刺を作成し、くまモンを売り出す活動を2010年から開始。そして、徐徐にくまモンを売り込むことから熊本を売り込むことにシフトしていきました。

kumamonsource :lsdmemo.jugem.jp

 

実際に、サントリーやUHA味覚糖などの会社にくまモンが営業活動に出かけました。それが話題となり地方メディアに取り上げられるという好循環も生み出しました。

その他にも「Wall street journal」や「AERA」などのメディアにも取り上げられるようになり、くまモンは世界的にも有名なゆるキャラとして人気を博すようになりました。

0df0c2cfwall street journalで紹介されたくまモンのイラスト

そして、くまモンの取り組みの中でもくまモンを有名にしたのは市民の力です。くまモンが誕生後、熊本県はイラストの著作権をクリエイティブディレクターの水野学氏から買い取り、利用料の無料化を実施しました。その結果、2010年は30件のみの利用許諾件数だったものの、2011年は2,418件、2012年は5,357件、2013年は9531件という結果になり、熊本関連の商品の売上が向上しました。

 

【出世するマチという文脈を利用した、出世大名家康くん】

静岡県浜松市の浜松城は徳川家康が29歳の時に築城し、家康公が浜松城を離れた後の歴代城主の多くが幕府の要職に登用されたことから、浜松城は後に「出世城」と呼ばれるようになりました。そして、過去において徳川家康が活躍しただけでなく、現代においてもヤマハやスズキ、ホンダなどの大企業が多く存在し、出世運があるという文脈が形成されていました。そこでまちづくりにおいても「出世するまち」という文脈からマスコットキャラクターを施策の一つに位置づけました。そして公募の結果、824点の優れた作品から選ばれたのが家康くんでした。そして、天下統一合戦などのユニークなキャンペーンを開始。浜松市がもつ観光資源や観光資源と共通点を持つ自治体にあえて勝負を挑み、浜松の魅力をアピールし、WEB上でそれを配信しました。

d7542-4-286214-0source : prtimes.jp

【恊働のまちづくり、さのまる】

恊働のまちづくりで地域の誇りをつくる栃木県佐野市のさのまる。平成22年に佐野市は「観光立市宣言」をし、重点施策に「佐野ブランドの推進」を掲げました。そして、平成23年に佐野ブランドキャラクターデザイン公募をし、34件から選考、その後の佐野ブランドキャラクターの名称公募においては521件からもの応募がありました。そして、お披露目会には1万5000人が参加、市内のイベントにて積極的に市民と交流する機会を設け、恊働のまちづくり戦略のもと地に足をつけた活動を行っていきました。その結果、2013年のゆるキャラグランプリにてグランプリを見事獲得。「さのまるは佐野市民の誇りです」という市民の方の声が聞かれるようになったそうです。そしてさのまるは、合併後の佐野市に一体感をもたらしました。

140222sanomaru-001_Rsource : www.47news.jp

ゆるキャラをブームで終わらせないために

浜松市の石岡氏は、「いろんな施策やいろんなキャラの中にゆるキャラという施策があることをまずは理解する必要がある」と言及しました。そして、佐野市の為国 氏は、「確かに現在、キャラクターの飽和化により、何のためのゆるキャラなのか、何を狙っているのか分かりづらくなっているという現状があります。だから、ただ他の地方自治体の成功モデルを真似するのではなく、まずその地域の何が魅力なのかを理解した上で、その地域の息の長いことを見極めていくことが必要なのではないでしょうか」とゆるキャラをブームで終わらせないためのアドバイスをしました。また、熊本県の成尾 氏は「ゆるキャラはブームではなくムーブメントにする必要がある。100年後も愛されるキャラクターになるためにクールジャパンの一つの戦略としてオリンピックを盛り上げる」と意気込みを語りました。

今回のセミナーに参加して重要だと感じたのが、いかに他のゆるキャラと差別化をはかるかだと思います。そういう意味で上の3つのゆるキャラたちは差別化戦略のもと施策が実施されたことが伺えます。また、オランダの「I amsterdam」キャンペーンと同じで息の長いキャンペーンを行うには市民をいかにうまく巻き込んでいくかが鍵となります。地域やまちに関わる際に重要なコミュニケーションポイントとなるのがゆるキャラであり、ゆるキャラは自治体のものではなく市民のものであるということが伝わることで広がっていくのではないでしょうか。熊本県の成尾 氏がおっしゃるように、ゆるキャラが一発屋のお笑い芸人のような扱いになるのか、それともディズニーランドのキャラクターのように普遍的な存在になれるか、今後が楽しみです。

大崎龍史(オオサキリューシ)
Facebook : Ryushi Rocky Osaki 
Twitter : ryushiosaki

 

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