前回の記事『最先端の観光キャンペーンから読み解く共通点【全編】』では、どういった観光キャンペーンが日本や海外で展開されているのかをご紹介しました。後半の本エントリーでは、それらの観光キャンペーンの共通点を見出し、これからの観光を考える上での「マスメディア型観光からフェス型観光」の潮流に迫りたいと思います。
大量消費型のマスメディア型観光は、一方通行で、しかもダサい
フェス型観光やフェス型観光キャンペーンのお話しをする前に、まずマスメディア型について説明します。マスメディア型とは、ここでは情報発信およびその伝播が一方方向であるということです。
私たち生活者は、「うちの地域はこれが強みじゃー!ドーン!だからいつでもおいでよ!」 的なマスメディア型の観光キャンペーンに目を向けなくなりました。理由は、情報過多もありますが、そういった観光キャンペーンはもはや時代おくれというか、私たちは一種のダサさを感じてしまっているからです。それは、今の観光スタイルにもいえます。
有名な観光名所に行って、観光ガイドから説明を受ける。その説明をテレビのように聞き流し、写真を撮ってその観光地を消費して終わり。高度経済成長期やバブル期であれば、人々はそれで満足していたかもしれません。
けれども、観光慣れした私たちにとってそういった観光スタイルは、もはや古く感じてしまうのではないでしょうか?ここで、デザイン活動家のナガオカケンメイさんにワークショップでお会いした際にお聞きし、今でも心に残っている言葉を紹介します。
”今の観光スタイルは時代遅れになってしまっている。私たちは、これから観光を若返らせなければいけない。”
ナガオカケンメイさんは、これをデザインの観点からおっしゃっています。日本中がデザインに興味を持ち始めたのに、駅前の観光案内所においてある観光パンフレットを見ても、いけてるパンフレットをおいてある地域は決して多くはないといいます。また、表現は悪いですが、まちの観光案内所も市役所の雰囲気をそのまま持ってきたような空間デザインであることが少なくありません。
観光客の旅の相談に乗り、旅のワクワク感を高めてくれるようなコンシェルジュ的な存在である場所にも関わらずそういった役割を自覚している案内所はあまりないように感じます。
だからこそ、ナガオカケンメイさんは観光に関する全体をデザインで底上げする必要があるといいます。観光ガイドも、これまでのような情報満載のものばかりではなく、デザインに関心のある人たちがデザインの視点で選んだ情報を載せよう。
そして、編集者の顔が見える旅の本があってもいいのではないかということで、トラベル誌「d design travel」を始められました。(参考:ICC-インタークロス・クリエイティブ・センター)
フェス型観光の仕組み作り
では、ナガオカケンメイさんがおっしゃるように観光を若返らせる、時代に合わせた観光や観光キャンペーンの仕組みを作るためにはどうすればいいのでしょうか。その一つの答えは、フェス型観光にあるのではないかと思います。
前回の記事でご紹介した観光キャンペーンは、国民にTwitterアカウントを貸し出し情報発信者になってもらったり、観光客に参加してもらい観光ガイドブックを作成したり、Ingressを活用して、その地域に地図を作ることでイベントを盛り上げるなどの仕組みがありました。
そして、お分かりかもしれませんが、これら4つに共通することはフェス型(参加型)の仕組みになっていることです。つまり、観光客や市民に何かしらの参加型の取り組みを行い、一緒になって盛り上げるような仕組みになっています。
わかりやすく説明するために、上の対照的な写真を見てください。左は、さきほどからお話ししている一方方向なマスメディア型の仕組みです。一方、右側はフェス型の仕組みです。フェス方の仕組の肝となるのは、参加型にしている点だけではありません。一番重要な特徴は、一方方向でも双方向でもなく、その周りにいるあらゆる人たちに影響を及ぼす力を秘めていることです。
もちろん、実際のフェスではアーティストが情報発信者の中心となります。けれども、上のように観客が盛り上がることで、周りに影響を及ぼし、そして全体の盛り上がりをつくっていく。そして、盛り上がりたい人はどんどん前の方に行ってアーティストとの距離を実際に縮めることができ、コアファンになっていきます。
さらにフェス型の仕組みのいいところは、自分の興味関心に応じて、参加度合いを変えれることです。前の方で盛り上がりたい人、後ろの方でゆっくり聞きたい人、それぞれが自分にあった参加度合いを選べます。そして、盛り上がりを見た後ろの人たちも興味を持ち出し、さらに大きな範囲で盛り上がりが醸成されていきます。これもフェス型の仕組みに参加しやすい要素ではないでしょうか?
観光に話を戻すと、高度経済成長期やそれ以降の観光スタイルに反動するかのように、地元民と関わったり、特産品の作り手さんと交流することを生活者の方々は求め始めました。そういった時代において、盛り上がりを醸成していくことができるフェス型観光や観光キャンペーンは、一つの仕組みとして求められているのではないでしょうか?
最後に、私は団体ツアーを否定しているわけではありません(笑) 団塊の世代の方々によって、団体ツアーは一番安心して参加できる観光スタイルだと聞きます。そして、団塊の世代が退職を迎え始め、日本の名所や遺産巡りのブームが起こり始めているのも事実です。けれども、その先、若者や外国人観光客のことを考え、新しい観光の仕組みを作っていくことが大切なのではないでしょうか。この日本で、今後の新しい観光ムーブメントが生まれてくることに期待です。
ご意見、ご感想お気軽にどうぞ!
Facebook : 大崎龍史 (Ryushi Rocky Osaki)