地域プロモーション(上)〜クリエイティブファーストからの脱却〜

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「ようこそ、うどん県へ」

2011年香川県は、今までにない斬新な観光プロモーションを実施し話題を呼びました。そして、その流れに乗り他地方自治体も同様な観光プロモーションを行いました。以下、私が参考になると感じた他都道府県の観光プロモーションをまとめています。さらに、実際にうどん県改名キャンペーンを行ったプロデューサー、デザイナーの方、そして香川県庁職員にお話をお伺いした内容を含め地域プロモーションに対する私個人の意見を恐縮ながら書き綴らせて頂きます。

うどん県、先進的な観光プロモーション

2011年:ようこそ、うどん県へ(香川県)

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香川県庁:うどん県観光プロモーションWebサイトよりスクリーンショット

2010年まで香川県の知名度は低く、ただ讃岐うどんの知名度は非常に高いという状況であったといいます。そこで、地元制作会社アクシスの山地プロデューサーは市場から選ばれる香川県を目指し、知名度向上のキャンペーンを企画されました。山地プロデューサーは、以下キャンペーンの際に3つのネット時代に対応したPR方法を強調されました。

短くインパクトのある映像

・インターネットの活用

・首都圏でのPR

そして予算配分に関しても費用のかかるテレビCMは使わずにYoutubeを使うなどして企画を実施されました。キャンペーン当時の2011年は、まだFacebook、Twitterが普及し始めた時期であり、それらSNSを利用して観光PRを行うという当時にして先進的なキャンペーンだといえます。また、山地プロデューサー曰く「We♡UDON」というキャッチフレーズも考えていたが、2チャンネルで香川県に対して「うどんばっかり食べてるからうどん県やなwwww」などといった書き込みが多く、そこからヒントを得て「ようこそ、うどん県へ」というキャッチコピーにしたといいます。実際にキャンペーンサイトを公開すると、予想通り2チャンネルの住民達がうどん県のキャンペーンを取り上げキャンペーンサイトのサーバーが落ちるというハプニングが起きました。そして、また2チャンネルの住民達がサーバーが落ちたことをネタにして2チャンネルで盛り上がり、さらに話題が拡大していきました。その様子を山地プロデューサーはチェックしており「じゃあ香川県にうどん県って住所書いて送ったら届くんじゃね?w」という2チャンネルの住民の話題に反応し、すかさず要潤と日本郵便局に直談判を行いました。それも話題となり新聞やテレビ局が取り上げ、話題はWebだけでなく他のメディアを通して拡散されていきました。また、キャンペーンサイト後の展開を見据えて残しておいた予算を使ってうどん県副知事に年賀状を送ろうというキャンペーンも行い、2700通の応募があり、さらなる話題性を生む活動を展開しました。巧みに話題をキャッチして柔軟に対応されたからこそこのような認知向上に繋がったと考えらます。

2012年:うどん県、それだけじゃない香川県(香川県)

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香川県庁:うどん県観光プロモーションWebサイトよりスクリーンショット

 

さらに続いて行われた2012年のキャンペーンでは、香川県=うどん県というコンテクストから大きくパーセプションチェンジを狙い「うどん県、それだけじゃない香川県」を展開されました。このキャンペーンについて香川県の地域政策部の職員にお話をお伺いすると、「今までうどんだけというイメージが強かったが、「うどんだけじゃない香川県」とPRが成功したことで、うどん以外の県産品が首都圏で販売しやすくなった」とおっしゃっていました。県産品の営業をする際に非常に使いやすいコンテクストが形成され、営業支援においてもプロモーションが貢献したことが考えられます。

 

「おんせん県って言っちゃいましたけん!」な大分県

「うどん県に続いたのが大分県。当初「おんせん県」の商標登録を目指したが却下され、他の温泉が有名な地域に叩かれてしまいました(笑)そういう意味で話題にはなりましたが、しかしPRとしては失敗。しかし、大分県のすごいところはそこから発想の転換をして観光PR「おんせん県って言っちゃいましたけん!」を始めたことです(笑)

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「おんせん県って言っちゃいましたけん!」の観光PRは、一度の失敗にめげず、さらにはその失敗をユーモアに変えるという芯の強さがある県民性を感じさせてくれます。さらに、タレントの起用もせず、地元住民がPR動画に登場し、大分県の温かさが伝わるような取り組みを実施しています。結果として1日に約54万再生を記録している動画もあったそうです。

参考:うどん県に続け!各自治体の動画PRの成功事例まとめ

高知家

高知県の記者会見PVでの広末涼子の土佐弁に多くの人は心奪われたのではないでしょうか。もちろんクリエイティブのレベルも高かったことがYoutube動画からうかがえます。しかし、それ以上に高知県のキャンペーンは、観光だけでなく移住支援も含めた明確なマーケティング戦略のもとに成り立っていることがわかります。以下、記者会見PVを再生した後に表示されるキャンペーンサイトですが、①知らない人、②もっと知りたい人、③訪ねてみたい人、④家族になりたい人、と生活者にとって選択しやすいテーマになっています。これらの項目は、マーケティング業界でよく使われる「マーケティングファネル」に見立て、それぞれの項目がマーケティングファネルの各位置に位置づけられています。マーケティングファネルは、一般的にAwareness(認知層)、Interest(興味関心層)、Consideration(比較検討層)、Purchase(購買層)、Advocacy(支持者層)と5段階に分かれており、生活者がどの段階にいるかによって、施策が変わってきます。特に、移住も含めた観光施策を行う場合、各段階で生活者が施策から離脱しないような、少なくとも恒常的に情報配信できる手だてを用意しておく必要があります。

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高知県:高知家観光プロモーションWebサイトよりスクリーンショット

 

 

これからの地域プロモーションに求められること

香川県の観光プロモーションは大成功に収まったようにみえます。しかし、平成10年の香川県の認知度は全国47位で最下位でした。そのときに県職員方々は危機感を持ち始めたそうです。そこでそれ以降、観光プロモーションに力を入れていて毎年「あれもだめかこれもだめか」という中で成功したのが2011年のうどん県改名キャンペーンであったと県職員の方はおっしゃいました。その中の一つに、ご存知の方もいらっしゃいますが「UDON」という映画もあります。しかし、ここで一つの疑問が出てきます。

「毎年の観光プロモーション予算が投資ではなく、費用で終わってしまっているのではないでしょうか?」

私が今年4月からお世話になる会社トライバルメディアハウスの池田紀行社長は数々の著書の中で、マーケティングを「フロー型」から「ストック型」へ変える必要があると述べています。

いままでの新商品や商品リニューアルのタイミングに合わせて講じられてきたさまざまな規模の施策は、ほとんどが2~3カ月の短期的なものだった。これでは、せっかく多くの消費者にブランド体験を促し、エンゲージメントが向上しても、そのときに接触した消費者との関係はキャンペーン終了時とともに断絶されてしまう。しかし近年、企業はキャンペーン実施時にFacebookページへの「いいね!」やTwitter公式アカウントのフォローを促すことで、キャンペーン終了時でも、参加した消費者とつながり続けることができるコミュニケーションチャネルを手に入れた。(略)個別に実施されては消えていった施策の成果が資産として蓄積されていく。

次世代共創マーケティングより引用

というのも、観光プロモーション自体、地方自治体投資予算によりますが約2000万ほどのキャンペーン予算を使い実施しています。しかし、毎年のプロモーションをコンペで行い、話題化して香川県のことを認知してもらっても、話題化される期間は短く、2011年のうどん県改名キャンペーンほどのインパクトのあるキャンペーンを今後展開することは難しいと考えます。2011年から始まった地方自治体の話題型キャンペーンに消費者も慣れてきて、以前ほど目的を達成できなくなってきたのではないかと考えます。では、今後どのような観光プロモーションが求められ、地方自治体はどのように観光プロモーションを捉えていかなければならないのでしょうか?

〜クリエイティブファーストからの脱却〜

ここでは主に移住プロモーションに関して述べていきます。地方自治体にとって、デッドラインが近づいている”少子高齢化”の問題。香川県においても2025年には人口が100万人から90万人に減少すると予想されており、日本全体においても2055年には全人口の4分の1が減ると予想されています。そこで地方自治体は、観光プロモーションによって交流人口を増やすよりも、移住プロモーションによって定住人口を増やすことで税収を増やさなければならないと考え、観光プロモーションよりも移住プロモーションに力を入れ始めた感があります。しかし、移住支援こそ観光プロモーションよりも明確な戦略策定が求められるにも関わらず、クリエイティブファーストになってしまっているのではないでしょうか?

「ゆるキャラが流行ればゆるキャラだ!」「話題型の観光プロモーションが流行れば、話題型の観光プロモーションだ!」と行動するのではなく、現状どのような課題(移住や観光に対するボトルネック)があり、その問題を解決するためにはどうしたらいいのか考えなければいけないと思います。そのためにゆるキャラや話題型プロモーションというクリエイティブがあり、戦略を二の次にしていてはせっかくのクリエイティブが生きずに予算が投資ではなく、費用で終わってしまいます。商店街の地域活性化や地方自治体の観光プロモーションに関して、アイデアや成功モデルをそのまま自分の地域に当てはめて真似をすることは上手ですが、それらが必ずしも成功しているとはいえません。例えば、高知県に「ひろめ市場」という有名観光スポットがあります。ひろめ市場は、郷土料理や特産品をはじめ、和洋中の多彩な飲食店がずらりと並び、「高知での食事に迷ったら、ひろめ市場へ」という言葉が実感できるほどの観光スポットです。そこで香川県のある商店街が、活性化を図り同じコンセプトやデザインのお店を出店しましたが、数年も持たず閉店してしまいました。

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出典:高知県観光情報サイト「よさこいネット」フォトライブラリーより

 

つまり、うどん県以降の話題型キャンペーンが全て成功したのかという点においても疑問を持たなければいけないと感じます。ちなみにうどん県はゆるキャラの数が全国一位という現状から「地域活性化の手段=ゆるキャラ」というコンテクストが形成されてしまっているように感じます。今後、何か新しいモデルが出てきたときに単に真似をするだけではなく、まずは自分の地域にある課題を見抜き、そこにクリエイティブの型をはめることが重要なのではないでしょうか。

「 地域プロモーション(上)〜クリエイティブファーストからの脱却〜」という題で恐縮ながら自分の意見を述べさせて頂きました。この続きに、少子高齢化の社会においてこの1年間香川県において模索した地域プロモーションの新しい形について執筆させて頂きます。最後まで読了頂きありがとうございました。

 

 

謝辞

地域プロモーションを学ぶにあたりお忙しい中お時間を割いていただいた山地プロデューサーはじめ、多くの香川県に関わる方々に感謝します。

地域プロモーション(中)〜シビックプライドの醸成〜
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